【フジテレビ】韓国との共同制作でウェブトゥーン実写化、FOD戦略強化の新たな一手
【ディンコの一言】
フジテレビが韓国のBIGINSQUAREと共同でウェブトゥーン原作ドラマを制作し、FODで独占配信する今回の発表は、日本のコンテンツ産業が直面するグローバル競争への明確な回答です。これは単なる作品供給に留まらず、急成長するウェブトゥーンIPの戦略的活用、そしてLEDバーチャルプロダクションやAIといった最新技術の導入を通じた制作体制の変革を志向する点で、今後の日本のメディア企業の方向性を示唆する重要な動きと言えるでしょう。
フジテレビ、韓国「BIGINSQUARE」と共同制作へ – Webtoon実写化とFOD強化の挑戦
フジテレビは、韓国のコンテンツ制作会社BIGINSQUAREと共同で、NAVERウェブトゥーン『個人的なタクシー』の実写ドラマを制作し、自社動画配信サービスFODで独占配信すると発表しました。この動きは、日本のテレビ局がグローバルなコンテンツ競争において、どのようにパートナーシップを組み、新たな制作手法を取り入れていくかを示す象徴的な事例として注目されます。
近年のエンターテインメント業界では、スマートフォンの普及とインターネット環境の整備を背景に、ウェブトゥーン(Webtoon)が新たな物語の供給源として世界中で急速に台頭しています。その市場規模は目覚ましく、2025年には約108.5億ドル規模に達すると予測されており、2030年には約483.1億ドル規模への成長が見込まれています。特にアジア太平洋地域は最も成長の速い市場の一つとされており、その影響力は映画やドラマ制作にも及んでいます。
このような市場背景の中、フジテレビが韓国のBIGINSQUAREとの共同制作に踏み切った狙いは複数あります。第一に、韓国の人気ウェブトゥーンという強力なIP(知的財産)を獲得し、FODのコンテンツラインナップを強化すること。第二に、BIGINSQUAREの親会社であるGIANTSTEPが持つLEDバーチャルプロダクション(VP)技術やAIを活用した制作手法を取り入れることで、効率的かつ高品質な映像制作を実現し、従来の制作の枠を超えた表現を目指すこと。そして第三に、この共同制作を通じてアジアのみならず北米やヨーロッパなどグローバル市場への展開を視野に入れていることです。
本作『個人的なタクシー』は、予約制のタクシーを舞台に、人々の人生模様を音楽と共に描くヒューマン・ミュージックドラマであり、視聴者に癒しと共感を提供する点が特徴です。
特筆すべきは、制作プロセスにおける先進技術の導入です。GIANTSTEPのLEDバーチャルプロダクション技術は、従来のグリーンバック撮影とは異なり、高解像度のLEDウォールにリアルタイムで背景を映し出し、役者が実際の環境にいるかのような没入感の中で演技できるメリットがあります。これにより、制作効率が向上し、ポストプロダクションにかかる時間やコストを削減できるだけでなく、よりリアルで高品質な映像表現が可能になります。NetflixやAmazon Prime Videoといった大手配信プラットフォームもこの技術に大規模な投資を行っており、2027年にはLEDバーチャルプロダクション市場が50億ドルを超えると予測されています。
また、日本と韓国のコンテンツ共同制作は、近年活発化しています。例えば、TBSは韓国のSTUDIO DRAGONやSomething Specialと、TV AsahiはSLLとそれぞれ共同制作を進めており、日本の地上波放送だけでなく、グローバル配信を視野に入れたプロジェクトが増加傾向にあります。これは、韓国のクリエイティブな才能と日本の市場規模や制作ノウハウが融合することで、双方にとって新たなビジネス機会が生まれることを示しています。
今回のフジテレビの動きは、単に韓国の人気IPを輸入するだけでなく、韓国の先進的な制作技術やグローバルな視点を取り込むことで、自社のコンテンツ制作能力と配信プラットフォームの競争力を同時に高めようとする戦略的意図が見て取れます。特に、「AIおよびリアルタイムコンテンツソリューションの活用」という点は、日本のエンターテインメント業界がテクノロジーの進化をどのようにコンテンツ制作に取り入れていくかという点で、今後の試金石となるでしょう.
ウェブトゥーンは、その視覚的な表現力と多様なジャンル展開から、映像化に適したIPとして今後もその重要性を増していくと考えられます。フジテレビがFODをハブとして、このような国際共同制作を推進することは、日本の配信プラットフォームが独自の魅力を確立し、グローバル市場におけるプレゼンスを高める上で不可欠な戦略となります。
将来的には、このような共同制作を通じて得られた知見や技術が、日本の他のコンテンツ制作にも波及し、業界全体の技術革新と国際競争力の向上に繋がる可能性を秘めています。今回の「個人的なタクシー」が、日韓のクリエイティブな融合と最新技術の活用によって、どのような新しい視聴体験を提供し、グローバル市場で受け入れられるのか、その成功事例が今後の業界の方向性を決定づける重要なファクターとなるでしょう。
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