【ビデオリサーチ】ついに始まったSVOD視聴の「見える化」革命
【ディンコの一言】
20カ国横断の配信データが日本上陸—これは単なる測定ツールの話じゃない。広告マネーが地上波からネット配信へシフトする中、ようやく配信業界にも「共通のものさし」が登場したということだ。コンテンツ制作費の高騰と制作リスクが年々増す今、このデータは業界の意思決定を根本から変える可能性を秘めている。
「配信で何が人気なのか、結局よくわからないんですよね...」
制作現場でよく耳にするこの嘆きが、ついに解決に向かいそうだ。ビデオリサーチが2024年7月24日に本格提供を開始した『SoDA(Streaming On Demand Analytics)』は、Netflix、Prime Videoといった主要配信プラットフォームの視聴実態を、まさに「丸裸」にしてしまうサービスだ。
従来の配信業界では、各プラットフォームが独自に公表するランキングや限定的な視聴データしか入手できず、制作サイドは「手探り状態」でのコンテンツ制作を強いられてきた。しかし今回、英国Digital i社との連携により実現したSoDAは、日本を含む20カ国でパネル調査を実施し、コンテンツ単位での詳細な視聴分析を可能にした。
2024年の動画配信市場規模を、5,710億円(前年⽐106%)と推計される成長市場で、ついに測定の標準化が始まったということだ。海外では既にNetflix、Disney+、HBO Maxなど4大プラットフォームを横断的に分析できる環境が整っているが、日本市場でも段階的に対象を拡大していく方針だという。
特に注目すべきなのは、「作品の視聴傾向が明らかになることで、コンテンツ販売金額の根拠が持てる」という機能だ。これまで配信事業者と制作サイドの間で生じがちだった「なぜこの価格なのか?」という疑問に、データという客観的な答えを提供できる。
ただし—ここで立ち止まって考えてみたい。このような詳細な視聴データの可視化は、果たして配信業界全体にとって本当にプラスなのだろうか?
従来、配信プラットフォームが視聴データを「ブラックボックス」化していたのには理由がある。完全にデータがオープンになれば、コンテンツ制作費の値上げ圧力が高まり、結果的に制作本数の減少を招く可能性もある。また、視聴者の嗜好が数値化されることで、制作現場のクリエイティビティが萎縮するリスクも否定できない。
しかし現実的に考えれば、この流れは止められない。2024年、動画配信(VOD)サービス全体の国内市場規模は推計5,930億円まで拡大した市場では、もはや「勘と経験」だけでの制作判断は許されなくなっている。
海外の状況を見ても、英国では2007年からBARB(放送視聴者調査委員会)の公式代理店として実績を積むDigital i社が、既にテレビと配信を横断した測定システムを確立している。日本も遅ればせながら、この国際標準に合わせる時期に来たのだろう。
配信業界の「見える化」は、制作現場に新たな緊張感をもたらすだろう。しかし同時に、データに基づいた戦略的なコンテンツ制作が可能になることで、業界全体の競争力向上にもつながるはずだ。
変化を恐れず、このツールを武器に変える—それができる制作者こそが、次の時代を生き抜いていくのだろう
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