【TBS GHD】脱・自前主義!『VIVANT』のU-NEXT配信が示すテレビ局の未来像


 【ディンコの一言】

TBSの今回の発表は、単なる番組配信のニュースではない。自社の強力IP『VIVANT』をU-NEXTに提供し、BS局の垣根を越えた連携を進める動きは、放送業界の「サイロ(縦割り)構造」の終焉を告げる号砲だ。これからのテレビ局は、放送という枠に留まらず、IPを軸にあらゆるプラットフォームを泳ぎ回る「総合IPプロデュース企業」への変革が問われる。その試金石となる戦略だ。


TBSが投じた「次の一手」の本当の意味

TBSホールディングスが7月2日に開催した定例社長会見。 ここで発表されたいくつかの取り組みが、メディア業界に静かな、しかし確実な衝撃を与えています。日曜劇場『VIVANT』続編決定に合わせて、そのノベライズ朗読版をU-NEXTなど外部プラットフォームで配信するというニュース。 そして、BS-TBSがライバル局であるBS朝日の人気番組とコラボレーションするという発表。

これらは一見すると、それぞれ独立した事業展開に見えるかもしれません。しかし、その根底には、日本のテレビ局が今まさに直面している構造的課題と、それに対する明確な戦略転換の意志が流れています。それは、「脱・自前主義」と「IP(知的財産)の解放」。今回は、このTBSの新たな動きから、放送業界の未来像を読み解いていきます。

背景と狙い:なぜ今、「外」へ向かうのか

テレビ局のビジネスの根幹が、自社の放送波でいかに高い視聴率を獲得し、広告収入を得るかであったことは言うまでもありません。TBSテレビも、2025年度上期の視聴率が好調で、広告セールスも目標を上回るなど、本業は盤石です。

しかし、その一方でメディア環境は激変しています。視聴者の可処分時間は、TVerのような見逃し配信はもちろん、Netflix、YouTube、そして音声メディアであるPodcastなど、無数のプラットフォームに分散しています。この現実に対し、TBSは極めて戦略的な一手を打ちました。それが、自社で生み出した強力なIPを、積極的に外部の有力プラットフォームへ供給するという決断です。

TBSラジオが手掛けた『VIVANT』の朗読版は、これまでも一部で配信されていましたが、今回新たに国内最大級のSVODであるU-NEXTでも配信を開始します。 これは、TBSのテレビドラマ朗読作品としては初の試み。 その狙いは明確で、TBSのコンテンツに触れてこなかったU-NEXTの膨大なユーザーにアプローチし、新たなファンを獲得すると同時に、IPの価値を最大化して収益を強化することにあります。

具体的なポイントと面白さ:ラジオ局の快挙とBS局の協調

この「外へ向かう戦略」は、他の発表にも色濃く表れています。

  1. 国内ラジオ局初の快挙! PodcastのYouTube展開 TBSラジオが運営するYouTubeチャンネル「公式TBS Podcast」の登録者数が10万人を突破しました。 これはPodcast専門チャンネルとしては、国内ラジオ局で初めての快挙です。 注目すべきは、音声メディアであるはずのPodcastが、

    映像プラットフォームであるYouTubeで成功を収めている点です。これは、海外の巨大Podcast市場ではすでに常識となっており、「聴く」だけでなく「観る・コメントする」という体験価値がファンを惹きつけています。TBSラジオはこのトレンドを的確に捉え、新たな音声コンテンツの成功モデルを日本で確立しつつあります。

  2. ライバルが手を組む、BS局間コラボ BS-TBSの人気番組『サンド伊達のコロッケあがってます』が、なんとBS朝日の人気番組『バナナマン日村が歩く!ウォーキングのひむ太郎』とコラボしました。 これまで視聴者を奪い合ってきたライバル局同士が、互いの人気番組の出演者やスタッフを乗り入れさせるという異例の試みです。これは、個別の局の利益を追求するのではなく、**BS放送全体のパイを拡大し、新たな視聴者を呼び込もうという「協調戦略」**へのシフトです。いずれは他のBS局のタレントとも連携したいという発言もあり 、業界の垣根を越えた連携が加速するかもしれません。

独自の視点と今後の展望:「放送局」から「総合IPプロデュース企業」へ

今回のTBSグループの一連の発表を貫くのは、**「IP流動化戦略」**とでも呼ぶべき思想です。これは、自社で創出したIP(『VIVANT』や人気番組)を、メディアの壁(テレビ、ラジオ)や企業の壁(U-NEXT、BS朝日)を越えて自在に移動させ、その価値を最大化していくという考え方です。

『VIVANT』は、TBSテレビが生み、TBSラジオが音声コンテンツ化し、U-NEXTという他社のプラットフォームで新たなファンに出会う。 この流れは、もはや従来の「放送事業」の枠組みでは捉えきれません。これは、TBSが「放送局」から、IPの企画・制作・展開の全てを手掛ける**「総合IPプロデュース企業」**へと本格的に舵を切ったことを示しています。

この戦略が成功すれば、『VIVANT』は今後、ゲーム化、海外でのリメイク、メタバース空間でのイベントなど、想像を超える形でその価値を増殖させていくでしょう。この「脱・自前主義」と「IPの解放」は、TBSだけでなく、日本のすべてのメディア企業にとっての未来の羅針盤となる可能性を秘めています。コンテンツIPさえ強ければ、プラットフォームは自前である必要はない。放送局の真の価値が問われる時代が、すぐそこまで来ています。

コメント

このブログの人気の投稿

【BS11】祇園祭山鉾巡行2025を今年も生中継!伝統と革新の融合

【NTV】全国CMをリアルタイム入札!「プログラマティックネット」始動

【FOD】ハチミツ芸人たちが進化目指す FOD新番組『進化のハチミツ』配信開始