ポイントカードがTVer広告を"激変"させる理由
【ディンコの一言】
Pontaの購買データを活用したターゲティング配信サービスが2025年8月5日に開始されたが、これは単なる広告の高度化ではない。日本独特のポイント経済圏とストリーミング広告の融合により、米国でAmazon Prime Videoが月平均1億1,500万人の視聴者に広告配信している手法を、より精密な「購買予測」で上回る可能性を秘めている。リアル店舗での購買データを持つTVer広告は、海外勢が真似できない独自性を武器に、映像配信業界の覇権争いで日本企業が反撃する契機となりそうだ。
「結局、TVの広告って効いてるの?」
そんなマーケターの永遠の悩みに、ついに明確な答えが出る時代が来た。TVerとロイヤリティマーケティングが始めた新サービスは、まさにその"聖杯"を狙い撃ちしたものだ。
従来のテレビ広告では「認知は上がったが、売上への影響は測定できない」という課題が付きまとっていた。しかし今回の連携により、TVer広告の配信によって実際に広告接触者がどの程度リアル店舗で対象商品を購買したのかを計測できるようになる。これは単なる技術革新ではなく、日本の広告業界にとって歴史的な転換点といえるだろう。
Pontaは1億人超の会員データ分析を武器に、リアル購買データやライフスタイルデータ、価値観データまで活用したターゲティングを実現する。一方で、海外の競合はどうか?Amazonの広告入りPrime Videoは全米だけで月平均1億1,500万人を超える視聴者数を誇るが、日本のように「ポイントカードと購買履歴」というリアルな行動データとの連携はまだ限定的だ。
実際、2022年11月にNetflixが独自の広告付きプランを開始し、Amazonも2024年1月にPrime Videoで同様の発表を行ったものの、両社とも視聴履歴ベースのターゲティングが主流。日本企業が持つ「実店舗での購買データ」という圧倒的なアドバンテージを活かせていない。
ここで興味深いのは、日本特有の"ポイント経済圏"の存在だ。Pontaのような共通ポイントサービスは、コンビニから家電量販店まで幅広い業態をカバーしており、消費者の行動を網羅的に把握できる。この点で、Amazon のEコマースデータとは異なる「リアル店舗中心」の購買パターンを捉えられるのが強みとなる。
しかし、一方で課題もある。プライバシー保護の観点から、個人情報を特定しない形でデータを連携するとはいえ、消費者の理解を得られるかは未知数だ。欧州のGDPR規制のような厳格なルールが日本でも強化されれば、データ活用の自由度は制限される可能性もある。
むしろ今回の取り組みで注目すべきは、「広告効果の可視化」だ。TVer広告出稿後のブランドリフト調査により、広告接触者と非接触者の好感度や理解度を比較できる仕組みは、従来のテレビ広告では不可能だった「態度変容の定量化」を実現する。これにより、CPM(Cost Per Mille)だけでなく、実際の購買貢献度まで含めたROI算出が可能になる。
海外勢が物量で攻めてくる中、日本企業は「精度」で勝負する戦略が見えてきた。Amazonプライム・ビデオが2025年からさらに広告を増加させる動きも報じられているが、TVerが先行して築いた「購買データ連携」の優位性をどこまで維持できるかが鍵となりそうだ。
日本の映像配信業界が、データ活用で海外勢に一矢報いる日は近い。しかし、この優位性がいつまで続くかは、今後の戦略次第だろう。
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