【U-NEXT】「配信覇権」狙う卓球への長期投資戦略の深謀
【ディンコの一言】
U-NEXTとテレビ東京が2028年まで約3年半にわたり卓球国際大会を配信するこの提携は、単なるスポーツコンテンツ拡充を超えた戦略的な意味を持つ。日本の卓球界が史上最強と言われる現在のタイミングで、"ニッチスポーツの独占配信権"を長期確保することで、U-NEXTは配信プラットフォーム間の差別化を図る高度な戦略を展開している。海外ではWTTが自社配信に力を入れる中、国内市場における独占的地位を築く意図が明確に読み取れる。
動画配信サービスの競争が激化する中、U-NEXTがテレビ東京と組んで卓球の国際大会配信に本格参入するというニュースは、一見地味に見えて実は業界の構造変化を象徴する重要な動きだ。
「ニッチスポーツ独占」という新戦略
背景にあるのは、NetflixやAmazon Prime Videoといった海外勢の圧倒的な資金力に対抗するため、国内プラットフォームが取る「垂直統合戦略」の典型例だ。テレビ東京が20年以上にわたり「世界卓球」を放送してきた実績と、U-NEXTが2022年より本格的にスポーツのライブ配信をスタートした経験を組み合わせることで、他社が簡単に真似できない「専門性」を武器にしている。
海外ではESPN+(米国)やDiscovery+(欧州)などが卓球配信を手がけているが、いずれも総合スポーツプラットフォームの一部として扱われている。一方、今回の日本の取り組みは、張本智和が世界ランク4位、張本美和が7位など日本選手の実力向上というタイミングを狙い撃ちした「コンテンツ・マーケット・フィット」の好例と言える。
配信プラットフォームの「コア視聴者獲得戦略」
興味深いのは、U-NEXT会員なら追加料金なしで視聴可能という料金体系だ。これは単純な収益追求ではなく、「卓球ファンという熱狂的なコア層を囲い込み、彼らを通じて周辺層にリーチする」戦略を示している。
コアな卓球ファンはもちろん、世界卓球やオリンピックをきっかけに卓球に興味を持ったライト層の方々にも最適という表現からも分かるように、U-NEXTは「ファンの段階別育成」を意識している。これは従来のマス向けアプローチとは真逆の発想で、まずコアファンを満足させることで口コミ効果を狙う「インフルエンサー・マーケティング的アプローチ」だ。
2028年福岡世界卓球を見据えた長期戦略
2028年には世界卓球の福岡開催が決定しており、日本での開催は2014年東京大会以来実に14年ぶりという事実は、この提携の真の狙いを物語っている。つまり、U-NEXTは2028年の国内開催という「ビッグイベント」に向けて、3年半かけて卓球ファンのデータベースを構築し、その時に最大のリターンを得ようとしているのだ。
これは従来の「スポーツ配信=短期的な話題性狙い」という発想を超えた、極めて戦略的な長期投資と位置づけられる。配信プラットフォーム業界において、こうした「ニッチ×長期×独占」という組み合わせは今後のスタンダードになる可能性が高い。
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