テレビ東京、第4の創業へ!「CaaS」と「AI」でグローバルIPメディアを目指す


 【ディンコの一言】
テレビ東京の統合報告書は、単なる財務報告にとどまらず、メディア業界の変革期における同社の明確な生存戦略を提示しています。特に注目すべきは、コンテンツを「サービス(CaaS)」として捉え直し、放送局という既存の枠を超えて、IPを多角的に展開していくという大胆な方向性です。これは、国内市場の縮小という厳しい現実を直視し、グローバル市場とテクノロジーの活用を成長の原動力に据えた、極めて現実的かつ未来志向のビジョンです。

テレビ東京ホールディングスが発表した「統合報告書2025」は、開局60周年を迎えた同社が、既存の放送事業の枠組みを大胆に超え、新たな成長軌道を描くためのロードマップを詳細に示しています。この報告書が示すキーワードは、「CaaS(Contents As A Service)」と「グローバルIPメディア」、そして「AI活用先端企業」です。

同社は、これまでの「放送」を中心としたビジネスモデルから脱却し、アニメやバラエティ、ドラマといった独自のコンテンツ・IPを起点に、様々なプラットフォームや事業へと広角的に展開する「CaaS」という独自の原則を掲げています。これは、テレビのリアルタイム視聴に依存するのではなく、コンテンツそのものの価値を最大化して多様なユーザーに届けるという、視聴者の視聴行動の変化に合わせた戦略です。特に、海外での成功事例として、ドラマ「ただ離婚してないだけ」のアラビア語版がエジプトで視聴数1位を獲得したことは、ローカル市場のニーズに合わせた展開の有効性を示唆しています

この「CaaS」戦略を後押しするのが、「グローバリゼーション「AI」です。日本政府が2033年までにコンテンツの海外市場規模を20兆円に拡大する目標を掲げる中、テレ東HDは2035年までに海外売上比率を現在の17.3%から40%に引き上げるという野心的な目標を掲げています。アニメを主軸に、FAST(広告付き無料ストリーミングサービス)などを活用して海外市場を開拓し、日本のコンテンツを世界に売り込んでいく計画です。また、社内業務の効率化やコンテンツ制作にAIを積極的に活用し、リソースをコンテンツ価値の最大化に再配分することで、競争力を高めると述べています

この戦略は、国内の他局と比較しても一歩踏み込んだものです。例えば、他局も動画配信サービス(TVerなど)に力を入れていますが、テレ東はそれに加えて、AIを経営戦略の核に据え、全社的なリスキリングや人材採用に35億円規模の集中投資を行うなど、より具体的なテクノロジーと人材への投資計画を明示しています。これは、短期的な収益改善だけでなく、長期的な企業価値向上を見据えた、メディア企業としての変革への強い意志を示していると言えるでしょう

テレビ東京の挑戦は、国内のメディア業界全体に影響を与える可能性があります。コンテンツを「サービス」として捉え直し、テクノロジーとグローバル市場を積極的に活用するこの戦略は、多くの企業にとっての未来の羅針盤となるはずです。

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