テレビドラマは「推し活」か?令和の高校生視聴動向の真実

 

【ディンコの一言】
令和の現役高校生の6割以上が「今年テレビドラマを見ていない」という調査結果は、テレビ業界の危機を改めて浮き彫りにした。しかし、これは単なる「テレビ離れ」という一言で片付けられる問題ではない。テレビドラマというコンテンツそのものが、彼らにとってのエンターテイメントの中心ではなくなり、あくまで「推し」の活動を追うためのツールへと変質している、というパラダイムシフトを鋭く示唆している。この変化は、コンテンツ制作のあり方だけでなく、マーケティング戦略、そしてメディアの役割そのものに根本的な再考を迫るだろう。

株式会社ワカモノリサーチが発表した「現役高校生のテレビドラマ視聴動向調査」は、日本のメディア業界に衝撃を与える内容だった。2025年に「テレビドラマを見た」と回答した現役高校生はわずか37.5%。62.5%が「見ていない」と回答したという。
その理由として最も多かったのが「テレビを見ない」という根本的な回答であり、また、「推しが出ているから見る」という動機が「ドラマが見たい」という純粋な興味を上回る結果も示された。


この傾向は、日本特有の現象ではない。海外に目を向けると、若者の映像コンテンツ消費のデジタルシフトはより一層進んでいる。英国のメディア監視機関Ofcomの調査によれば、16~32歳の若年層は、テレビのリアルタイム視聴よりも、SVOD(定額制動画配信サービス)やYouTubeといったネット動画の視聴時間が圧倒的に長い。
特にショートフォームビデオの台頭は顕著で、TikTokのようなプラットフォームが若者のエンゲージメントを強力に獲得している。米国を中心に、デジタルビデオコンテンツ市場は2033年までに5740億ドルに達すると予測されており、この市場の成長を牽引しているのが、まさにAIを活用したパーソナライズされたショート動画コンテンツである。


今回の調査結果が示唆する、最も重要な独自の視点は、若者にとっての「映像コンテンツ」が「推しを愛でるための手段」へと変貌していることだ。
ドラマのストーリーや演出そのものよりも、好きな俳優やアイドルがどんな役を演じ、どんな表情を見せるかに価値を置いている。この「推し活」を主軸としたコンテンツ消費は、テレビ業界にとって大きな脅威であると同時に、新たな活路でもある。
今後は、視聴率やマスへの訴求力といった旧来の指標だけでなく、「推し活」にいかに貢献できるか、という視点でのコンテンツ制作が求められるだろう。
例えば、ドラマのメイキングをショート動画で配信したり、出演者のSNSでの裏側を発信したりするなど、多角的な展開が不可欠となる。
テレビはもはや単独のメディアではなく、他のデジタルプラットフォームと連携し、ファンエンゲージメントを高めるための「ハブ」として機能する未来が来るのかもしれない。

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