DAZNがBリーグの放映権獲得で加速するスポーツ配信の「選択と集中」
【ディンコの一言】
DAZNがBリーグの放映権を獲得したことは、単なるコンテンツラインナップの拡充に留まらない。これは、日本のプロスポーツ放映権市場における「選択と集中」の最終段階の始まりを告げるものだ。国内三大プロスポーツリーグ(Jリーグ、プロ野球、Bリーグ)の放映権を独占的に掌握したDAZNは、もはや単なるスポーツ配信サービスではなく、日本のスポーツメディアそのもののインフラとなりつつある。この動向は、他社との競争を激化させると同時に、スポーツファンがコンテンツにアクセスする際の消費行動を根本から変える可能性を秘めている。
DAZNがBリーグの2025-26シーズンから3シーズンにわたる放映権を獲得し、B1・B2の全試合をライブ配信することを発表した。これにより、DAZNは既に配信しているJリーグ、プロ野球(一部球団を除く)に加え、日本の3大プロスポーツリーグを網羅するサービスとなった。これは日本のスポーツコンテンツ市場における歴史的な転換点であり、その背景にはスポーツコンテンツの「メディアとしての価値」が大きく変化していることがある。
日本のプロスポーツリーグの放映権ビジネスは、1990年代のJリーグや2000年代のプロ野球に代表されるように、テレビ局が中心となって発展してきた。しかし、DAZNが2017年にJリーグと10年間で2100億円という巨額の契約を結んで以来、その構造は大きく変わった。この契約は、放映権市場にOTT(オーバー・ザ・トップ)プラットフォームが本格参入する起爆剤となり、日本のスポーツビジネスに新たな収益源をもたらした。
今回のDAZNとBリーグの契約も、この流れの延長線上にある。これまでBリーグは「バスケットLIVE」や「Amazon Prime Video」など複数のプラットフォームで配信され、視聴者は各サービスを使い分ける必要があった。しかし、今回のDA映の独占的な放映権獲得により、ファンの利便性は飛躍的に向上する。
さらに、この動きは海外の動向と照らし合わせると非常に興味深い。例えば、米国ではNFL(アメリカンフットボール)がAmazon Prime Videoと、MLS(メジャーリーグサッカー)がAppleと巨額の独占契約を結ぶなど、特定のOTTプラットフォームが特定のプロスポーツリーグと深く結びつく動きが加速している。日本ではDAZNがJリーグ、プロ野球、Bリーグと立て続けに連携を深めたことで、この「特定のプラットフォームが複数の主要リーグを束ねる」という独自の進化を遂げている。
DAZNが三大リーグを包括することで、日本のスポーツファンは「DAZNに入れば主要な試合はほぼ見られる」という新しい消費行動を確立する。これは、スポーツコンテンツが「個別の専門チャンネル」から「総合的なスポーツプラットフォーム」へと移行する大きな一歩だ。
今後のDAZNは、サッカー、野球、バスケという三大人気スポーツのファンベースを相互に流入させ、新規顧客を獲得するだけでなく、DAZNというブランドそのものを日本のスポーツ視聴体験の代名詞へと高めていくだろう。この強力なポートフォリオは、さらなる独占コンテンツ獲得競争や、各リーグとの関係性の深化を加速させる。日本のスポーツビジネスは、いよいよ「DAZN経済圏」を中心に回る時代に突入したと言える。
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