【J:COM】BS放送の「隙間」を埋める戦略
【ディンコの一言】
このニュースは、単にチャンネルの24時間化というだけではありません。テレビの「ながら視聴」が主流となる中で、ユーザーの潜在的なニーズ、特に「見たいものが決まっていない」時間帯を狙った巧みなコンテンツ戦略だと評価できます。見逃されがちなBS放送のポテンシャルを最大限に引き出そうとする、J:COMの次の一手として注目に値します。
J:COM BSが10月からの24時間編成を発表し、注目コンテンツとして昭和の名作『キイハンター』をBS放送で初放送するというニュースは、一見すると単なる編成強化に見えるかもしれません。しかし、これはテレビ視聴の多様化が進む現代において、視聴者の「余白」を埋めるための重要な戦略です。
日本のBS放送市場は、衛星放送協会が発表した2024年の調査によると、CS/BSペイテレビ(有料放送)の加入世帯が約1,307万世帯に達し、多くの家庭に普及しています。一方で、無料BSチャンネルの視聴時間が増加する一方で「ほとんど視聴していない」層も約6割に達するというデータもあり、視聴者の行動は二極化しているのが現状です。多くの視聴者は地上波や配信サービスで視聴したいコンテンツを能動的に探す一方で、無目的でテレビをつける「ながら視聴」のニーズも依然として存在します。
今回の編成リニューアルは、まさにこの「ながら視聴」層に向けた挑戦と言えそうです。往年の名作ドラマ『キイハンター』全262話の一挙放送や、BS初となるアジアドラマ、懐かしのアニメなど、多様なジャンルを揃えることで、特定のファン層だけでなく、幅広い層が「たまたまチャンネルを合わせたら面白そう」と感じるようなラインアップを意識しているのです。これは、NetflixやAmazon Prime Videoなどの配信サービスが個人の嗜好に合わせたレコメンド機能でユーザーを囲い込むのとは対照的に、放送局として「偶然の出会い」を創出する旧来のテレビの強みを再定義する試みとも言えそうです。
米国では、コンテンツの細分化が進む一方で、クラシック映画や過去の名作ドラマを専門に放送するチャンネルが根強い人気を誇ります。これは、ストリーミング疲れや作品選びの負担を感じる視聴者が「懐かしくて安心できる」コンテンツに回帰する動きと見て取れます。J:COMの今回の戦略は、日本のテレビ視聴者にも同様の心理が働いていることを示唆しているのではないでしょうか。デジタルデバイスに疲れた人々が、リモコンひとつで手軽に楽しめる、良質で懐かしいコンテンツを求めている。このニュースは、その潜在的なニーズを掘り起こし、テレビ放送の新たな価値を創造する契機となるかもしれません。
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