『新しいカギ』世界へ。日本のバラエティ成功の方程式




フジテレビ『新しいカギ』が世界へ!なぜ「かくれんぼ」がデンマークで売れたのか?その快挙の裏にあるしたたかな戦略


「日本のバラエティは国内向け」。いつからか、私たちの業界ではそんな言葉がまるで常識のように語られてきました。しかし、本当にそうなのでしょうか?複雑な笑いの文脈、言語の壁…。そういった障壁は、もはや過去のものになりつつあるのかもしれません。


こんなニュースを見つけました。
出展元: フジテレビジョン
URL: [https://www.fujitv.co.jp/company/news/251015.html]

フジテレビの人気番組『新しいカギ』。その中の人気企画「学校かくれんぼ」が、先日フランス・カンヌで開かれた国際映像コンテンツ見本市・MIPCOMで、なんとデンマークの大手制作会社Strong社と契約を締結したというのです。これは単なる一つの番組の成功事例ではありません。日本のコンテンツが世界で戦うための、極めて重要な「ヒント」が隠されている、とディンコは睨んでいます。

さて、このニュースの裏側を、一緒に深掘りしていきましょう。

「ルールが単純」は最強の武器。言葉の壁をいとも簡単に飛び越える魔法

まず、誰もが最初に思う疑問はこれでしょう。「なぜ、よりによって『かくれんぼ』だったのか?」と。

実のところ、ここにこそ最大の勝因が隠されているのです。考えてみてください。「かくれんぼ」に複雑な説明は一切必要ありません。「隠れる人」と「探す人」がいる。ただそれだけ。この究極のシンプルさこそが、言語や文化の壁をいとも簡単に飛び越えるパスポートになるのです。

私たちはコンテンツを開発する際、つい「新しい仕掛け」や「複雑なルール」を足し算で考えがちです。しかし、世界市場を見据えたとき、本当にパワフルなのは、誰が見ても一瞬で理解できる普遍的な「型」。それはまるで、優れたアプリのUI/UXデザインが直感的であるべき、という思想にも通じます。今回の「学校かくれんぼ」は、チョコレートプラネットや霜降り明星、ハナコといった人気芸人たちが、学校というノスタルジックな舞台で本気で遊ぶ姿がキモですが、その根幹にあるのは、世界中の誰もが子供の頃に体験したであろう原体験なのです。

「結局、一番面白いのはシンプルなものなんだよね」…そんな声が、カンヌの会場からも聞こえてきたような気がします。


 配信全盛の今、なぜカンヌへ?MIPCOMが持つ「リアル」の価値

次に気になるのは、なぜNetflixやAmazon Prime Videoといった配信プラットフォームが全盛のこの時代に、わざわざフランス・カンヌまで足を運ぶ必要があるのか、という点でしょう。

「え、今さら見本市?」なんて声が聞こえてきそうですが、これがとんでもない。MIPCOMのような伝統的な見本市は、デジタルでは決して代替できない戦略的価値を今もなお保持しているのです。最大の価値は、「偶然の出会い」から生まれる化学反応にあります。

世界100カ国以上から集まったプロデューサーやバイヤーたちが会場をザワザワと歩き回り、熱気ある商談を繰り広げる。オンラインミーティングでは決して生まれない、人と人との信頼関係、そして予期せぬアイデアの衝突。それはまるで、一流のシェフたちが最高の食材を求めて集う活気ある市場のようです。フジテレビの担当者も、きっとそんな熱気の中で、デンマークのStrong社という最高のパートナーを見つけ出したに違いありません。

FAST/AVOD(無料広告付き動画配信サービス)の台頭や、AI活用の議論など、業界の最先端のトレンドがリアルタイムで交換されるこの場所は、未来のコンテンツビジネスを占う羅針盤でもあるのです。


なぜ最初の地がデンマーク?計算され尽くした欧州への「橋頭堡」

「海外展開」と聞くと、私たちはついアメリカやアジアの巨大市場を思い浮かべがちです。しかし、今回の最初のパートナーがデンマークだったことには、非常にクレバーな戦略的意図が隠されています。

デンマークを含む北欧市場は、実はコンテンツビジネスにおける「理想的なテストマーケット」としての側面を持っているのです。

その理由はいくつか挙げられます。

ビジネス環境の安定性:政治的・経済的に安定し、契約社会としての信頼性が非常に高い。

高付加価値への理解: 国内市場が小さい分、ニッチでも質の高いコンテンツを評価する土壌がある。

デジタル化の浸透: コンテンツの流通やマーケティングがしやすい。

欧州へのゲートウェイ:デンマークでの成功は、他のヨーロッパ諸国へ展開する際の強力な実績となる。

フジテレビは、デンマークを欧州市場攻略のための重要な「橋頭堡」と捉えたのでしょう。いきなり巨大市場で勝負をかけるのではなく、まずは成功確率の高いマーケットで実績を作り、そこからドミノ倒しのように展開していく。実に、したたかで合理的な戦略だと言わざるを得ません。


「Made in Japan」から「Born in Japan」へ。フォーマット販売が拓く未来

今回の成功は、日本のコンテンツ業界全体にとって大きな希望です。かつて『風雲!たけし城』や『SASUKE』が世界を熱狂させたように、日本のバラエティには世界に通用するポテンシャル、いわば成功の「型」が存在します。

その「型」とは、

1.  言語に依存しない、視覚的な面白さ

2.  出演者の本気が生む、等身大の人間ドラマ

3.  世界中の誰もが思いつかなかった、ユニークな企画力

これらを「完成品(番組)」として売るだけでなく、企画の核となる「アイデアの種(フォーマット)」として販売する。そうすることで、現地の文化やタレントに合わせてローカライズされ、より多くの人々に愛されるコンテンツへと成長していくのです。

そういえば、『マネーの虎』がイギリスで『Dragons' Den』として大成功し、世界中に広がった例はあまりにも有名ですね。あれこそ、フォーマット販売の威力を示した最高の事例でしょう。

とはいえ、フォーマット販売を拡大するには、知的財産権の管理や、国によって異なる「面白さ」の基準をどう維持するか、といった品質管理の課題も山積みです。しかし、これらの課題を乗り越えた先に、「Made in Japan」のコンテンツが「Born in Japan」のアイデアとして世界中で花開く、そんな未来が待っているはずです。

今回のフジテレビの快挙は、その未来への確かな一歩。私たちは今、日本のテレビコンテンツが再び世界を席巻する、その黎明期に立ち会っているのかもしれません。

さて、あなたの周りには、どんな「世界に通用するシンプルな種」が眠っているでしょうか?案外、灯台下暗し、かもしれません。



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