Z世代はタイパより「推しパ」?リアルタイム視聴、驚きの復権
【ディンコの一言】
「若者はテレビ離れ」という常識が覆りました。パナソニックの調査が示すのは、VOD時代の終焉ではなく「孤独な視聴」の終焉です。カギは「推し活」が生む、リアルタイムの熱狂と連帯感。放送の価値が再定義されています。
「どうせ録画かVOD」その常識、もう古いかもしれません
「最近の若い世代は、テレビをリアルタイムで見ない。タイパ(タイムパフォーマンス)重視だから、CMをスキップできる録画やVOD(ビデオ・オン・デマンド)が当たり前」
私たち映像業界に身を置く者にとって、これは半ば常識と化していました。しかし、その“常識”を揺るがす、非常に興味深いデータが発表されました。
パナソニック株式会社が10代〜40代の男女800名を対象に実施した「テレビ視聴に関する意識調査」です。この調査で、特に1990年代後半から2010年頃に生まれた「Z世代」の意外な本音が浮かび上がってきたのです。
Z世代が「今、見たい」本当の理由
実のところ、調査結果によれば、若年層ほど「リアルタイムで番組を視聴したい」という意向が強いというのです。これは一体、どういうことでしょうか?
答えは、彼らの熱狂的な「推し活」にありました。
Z世代にとって、テレビ番組は単に「視聴」するコンテンツではありません。それは、同じ「推し」を応援する仲間たちと、感動や興奮を「共有」するための“祭り”なのです。
例えば、お気に入りのアイドルが出演する音楽番組。それをリアルタイムで視聴しながら、X(旧Twitter)などのSNSで「#(ハッシュタグ)」を付け、実況ツイートを投稿する。
「今の笑顔、最高だった!」 「新曲のダンス、キレがすごい!」
こうした熱狂が、放送時間中にデジタル空間で渦巻きます。この「今、この瞬間を共有している」という圧倒的な一体感、ライブ感こそが、彼らにとって何物にも代えがたい価値となっているのです。これは、後から一人で録画を見ても、決して味わうことができません。
“孤独な視聴”から“参加する視聴”へ
ふと海外に目を向けても、この傾向は同じです。北米や欧州でも「ソーシャルTV」という概念が定着して久しい。デロイトのグローバル調査などを見ても、Z世代がコンテンツ消費において「コミュニティ」や「参加」を重視する傾向は明らかです。
かつて、テレビCM中にスマホをいじるのは「視聴の中断」であり、広告主にとって“困ったこと”でした。しかし今は違います。パナソニックの調査が示すのは、スマホ(セカンドスクリーン)はテレビの敵ではなく、むしろ熱狂を増幅させる最強の“相棒”であるという事実です。
少し小ネタですが、海外ドラマファンなら「ゲーム・オブ・スローンズ」放送時の熱狂を覚えているでしょう。放送直後、世界中のSNSが感想や考察で埋め尽くされました。あの感覚です。VODで全話イッキ見する「孤独なマラソン」とは対極にある、「みんなで走るお祭り」こそが、Z世代をテレビの前に呼び戻しているのです。
放送局が握る「同時性」という最強のカード
さて、この事実は、VODの波に押され気味だった放送業界にとって、とてつもない朗報と言えるでしょう。
NetflixやAmazon Prime Videoが持つ強みが「膨大なアーカイブ(書庫)」であるならば、テレビ局が持つ最強の武器は「今、この瞬間」という「同時性(ライブ性)」です。
重要なのは、単に番組を放送するだけでなく、視聴者が「参加」し、「共有」したくなる“余白”をデザインすること。SNSでのトレンド入りを意識した仕掛けや、視聴者参加型の企画が、今後ますます重要になります。
パナソニックの調査結果は、私たち業界人に鋭い問いを投げかけています。タイパを追求するVODとは違う土俵で、いかに「推し活」の熱量を最大化する「推しパ(推し活パフォーマンス)」の高い放送を提供できるか。
もはやテレビは、一方的に映像を“見せる”装置ではありません。それは、日本中の熱狂を“束ねる”ための一大イベント装置へと、その役割を静かに、しかし劇的に変化させているのです。

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