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7月, 2025の投稿を表示しています

【電通】テレビ広告の未来:データ活用で「信頼のメディア」を再構築する

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【ディンコの一言】 電通の提言は、テレビが「放送」から「放送と配信がミックスされた」サービスへと進化する中で、その広告価値をいかに高めるかという、業界の喫緊の課題に深く切り込んでいます。特に「誰でも無料で見られる」という放送の公共的価値と、「信頼性・安心」という放送コンテンツの強みを強調し、これらをデータ活用によってマーケティング全般に活かすことの重要性を指摘しています。OTTやショート動画の台頭で視聴行動が多様化する中、テレビがその特性を活かした新たな広告取引モデルを構築できるかどうかが、日本の情報空間の健全性を守る上でも極めて重要になるでしょう。 株式会社電通のグロースオフィサー(メディアビジネスイノベーション担当)須賀久彌氏が、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」にて、「これからのテレビメディアの価値向上、及びデータの利活用について」と題した発表を行いました。この資料は、テレビを取り巻く環境の変化と、その中でテレビ広告が持つ本質的な価値を再定義し、データ活用によって新たな成長を模索する電通の戦略的視点を示しています。 テレビサービスの変化と広告価値の再構築 電通は、テレビサービスが「放送」単体から「放送と配信がミックスされた」サービスへと移行している現状を前提としています 。このような環境変化の中で、テレビ広告の価値を維持・向上させるためには、広告放送の持つ「多くの国民が無料でコンテンツを見られる環境」という公共的価値と、それに伴う「信頼性・安心」という強みを再認識することが重要だと指摘しています 。特に、偽・誤情報が氾濫する現代において、放送の信頼性は「情報空間の健全性を支える一媒体」として不可欠であり 、テレビCMやTVerなどの配信広告も「全て事前考査して放送」されることで、その信頼性が担保されていると強調しています 。 「リーチ」と「信頼」を可視化するデータ戦略 電通の発表資料は、テレビ広告の価値を向上させるための具体的なアプローチを提示しており、特に以下の点が注目されます。 テレビ広告の価値:無料性と信頼性 日本のテレビ広告費は概ね横ばいで推移していますが、動画広告の本格化に伴い、電波メディア全体の広告費シェアは低下傾向にあります 。しかし、テレビは依然として「多くの国民が無料でコンテンツを見られる環境」を提供しており、これ...

【博報堂】岐路に立つ放送ビジネス:デジタル時代における新たな活路

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【ディンコの一言】 博報堂の発表資料は、日本の放送業界が直面する厳しい現実と、そこから脱却するための具体的な方向性を提示しています。特に、テレビ広告費が回復傾向にあるものの、視聴率に依存しない価値創造が不可欠であるという指摘は本質的です。インターネット広告の急成長やグローバルOTTによるコンテンツ獲得競争が激化する中で、放送局が持つ「信頼性」という強みをいかにデジタル時代に最適化し、新たな収益源へと繋げるかが問われています。これは単にビジネスモデルの変革に留まらず、社会の情報インフラとしての放送の役割を再定義する大きな挑戦と言えるでしょう。 株式会社博報堂が、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」にて、「放送局ビジネスの現状と未来」と題した発表を行いました。この資料は、日本の放送局が直面する市場環境の変化と、その中でいかに新たなビジネスモデルを構築し、持続的な成長を実現していくかについての洞察を提供しています。 広告市場のデジタルシフトと放送局の変革期 近年、日本の広告市場ではインターネット広告が急速に成長し、2024年度にはテレビ広告の2倍の規模に達しています 。インターネット広告は、顧客の認知から購買、リピート、ファン化までの全領域を精緻に可視化・分析できる「フルファネルマーケティング」に対応していると市場に認識されています 。一方で、テレビ広告は「認知獲得」に強みを持つものの、顧客行動の全てを可視化・分析する点では課題を抱えています 。このような市場の変化を受け、放送局は視聴率に依存しない新たな価値創造とビジネス改革が急務となっています 。 信頼性の「武器化」とローカル局の可能性 博報堂の資料は、放送局が持つユニークな強みと、それを活かしたビジネス戦略の方向性を示しています。 放送局ビジネスの現状分析 2024年度のテレビ広告費は3年ぶりに回復を見せ、パリ五輪などの大型イベントや配信領域、コンテンツビジネスの伸長が総売上の回復に貢献しています 。しかし、過去数年単位で見ると、放送事業および総収入は漸減傾向にあります 。TVerなどの配信領域は好調ですが、放送ビジネス全体を補完するにはさらなる成長が必要です 。 マーケティングにおけるメディアの役割 インターネット広告の伸長により、顧客行動の全領域をカバーするマーケティングが主流となる中で...

【野村総合研究所】テレビ視聴の未来:コネクテッドTVが変える放送の形

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【ディンコの一言】 野村総合研究所の調査報告は、日本の放送業界が直面するデジタルシフトの現実を、海外事例と国内の視聴者意識・利用状況から多角的に分析しており、非常に示唆に富んでいます。特に注目すべきは、CTV普及による視聴行動の変化と、それに対応するための「プロミネンス」の重要性です。コンテンツの偏りやフェイクニュースへの懸念が高まる中で、信頼性の高い放送コンテンツがユーザーに届きやすくする仕組みの構築は、単なる技術的な課題ではなく、社会の健全な情報流通を支える根幹に関わる問題と言えるでしょう。この報告は、放送と配信の融合が不可避である現代において、放送局、プラットフォーム事業者、デバイスメーカーが連携し、新たな視聴体験と公共的価値を創造していく必要性を強く訴えかけています。 野村総合研究所(NRI)が総務省より受託した「放送コンテンツのネット配信促進に向けた諸外国における仮想プラットフォーム事例等に関する調査研究」の発表資料が公開されました。この広範な調査は、コネクテッドTV(CTV)の普及が進む現代において、放送コンテンツがどのように視聴され、その価値がどのように認識されているかを、国際的な視点と国内の具体的なデータから詳細に分析しています。 変革期のテレビ視聴環境と「プロミネンス」の重要性 近年、スマートテレビやストリーミングデバイスの普及により、インターネット経由での動画視聴が一般化しています。これにより、NetflixやAmazon Prime VideoといったグローバルOTT(Over The Top)サービスが台頭し、従来の放送を中心とした視聴行動に大きな変化をもたらしています。このような状況下で、放送コンテンツが多様な情報の中で埋もれてしまわないようにするための「プロミネンス(顕著性確保)」の議論が世界的に活発化しています。本調査研究は、諸外国の取り組みを参考にしつつ、日本におけるプロミネンス制度のあり方や、CTV上での放送コンテンツのあり方を検討することを目的としています 。 加速する視聴行動の変化と高まる信頼性へのニーズ 報告書では、以下の5つの主要な調査結果が示されています。 諸外国における視聴データ等の取扱いに関する調査 米国や英国では、CTVの普及に伴い、従来の視聴率測定ビジネスが大きく変化し、スマートTVのビッグデータとパネル調査を組み...

【MRI 三菱総合研究所】放送コンテンツのネット配信促進に向けた仮想プラットフォームの構築に関する調査研究の報告

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  【ディンコの一言】 今回の三菱総合研究所の報告は、コネクテッドTV時代における放送の生き残り戦略を明確に示唆しています。特にTVerとNHKプラスの連携による「仮想プラットフォーム」の検証は、公共放送と商業放送の垣根を越え、視聴者中心のサービス設計へと舵を切る画期的な取り組みです。これは単なる技術検証に留まらず、情報過多の時代における「信頼性の高い情報」へのアクセスを保障するという、放送本来の社会的使命をネット空間で再定義しようとするものです。社会実装には運営体制やビジネスモデル、権利処理など多くの課題が残るものの、その先には放送コンテンツが多様な形で国民に届けられる未来が期待されます。 三菱総合研究所が総務省の令和6年度事業として実施した「放送コンテンツのネット配信促進に向けた仮想プラットフォームの構築に関する調査研究」の成果報告書が公開されました。この調査研究は、インターネットの普及により情報空間が広がり、フェイクニュースやフィルターバブルといった問題が顕在化する中で、「放送の価値」、すなわち取材や編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信の重要性が高まっている現状認識からスタートしています。 コネクテッドTV時代における放送の「プロミネンス」 近年、コネクテッドTV(インターネット接続機能を持つテレビ)の普及やチューナーレステレビの登場により、視聴者のテレビ視聴環境は大きく変化しています。従来の放送波に加え、TVerやNHKプラスといった配信サービスを通じて番組を視聴するスタイルが定着しつつあります。しかし、多様な配信サービスが乱立する中で、放送コンテンツが埋もれてしまう「プロミネンス(顕著性)」の課題が浮上していました。この調査研究は、こうした背景を踏まえ、放送コンテンツへのアクセス性を向上させ、情報空間全体における健全性を確保することを目的としています。 TVerとNHKプラスの融合、そしてローカル局の挑戦 本調査研究では、主に以下の5つの調査項目と利用者受容性調査が行われました。 仮想プラットフォームの検証 TVerを母体としてNHKプラスの番組コンテンツを統合表示するコンセプトモデルが構築されました。これにより、ユーザーはTVerアプリからNHKプラスのコンテンツもシームレスに視聴できるようになります。会場調査では、回答者のほぼ全員がこの連携に...

【総務省】テレビ業界の未来は?「電波」から「ネット」への大転換期を議論!

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【ディンコの一言】 総務省の検討会で示された議論は、テレビ業界が直面する本質的な課題と、その変革の必要性を浮き彫りにしています。特に「電波」から「ネット」へのシフトは、単なる配信経路の変化に留まらず、ビジネスモデル、コンテンツ制作、そしてメディアとしての社会的役割そのものに再定義を迫るものです。短期的な収益確保と、長期的なメディアとしての信頼性維持。この二律背反をどう乗り越えるかが、日本のテレビ業界の喫緊の課題と言えるでしょう。 デジタル時代における放送制度の在り方に関する総務省の検討会(第33回)議事要旨が公開され、テレビ業界の未来を左右する重要な議論が交わされました。主な焦点は、テレビの視聴環境の変化と、それに伴う放送事業者の経営、特に「電波」から「ネット」への移行の必要性です。 今回の議論では、電通メディアイノベーションラボと野村総合研究所からの報告を基に、テレビ視聴の現状と課題が深く掘り下げられました。特に注目すべきは、林構成員や曽我部構成員から提起された「電波伝送路のレガシー化」と「ネット展開の不可欠性」という点です。テレビがマスメディアとしての地位を維持するためには、視聴者へのリーチを拡大する必要があり、そのためにはネット事業への進出が不可欠であるという認識が共有されています しかし、その道のりは平坦ではありません。落合構成員からは、ローカル局が収益に占める放送事業の割合がむしろ増加傾向にあるという現状が指摘されました 。これは、キー局が多角化を進める一方で、地方局がネット展開や他事業への投資に踏み出せていない実情を示唆しています。また、曽我部構成員からは、ネット広告の単価が低いことから、リーチを維持できても収入自体は維持できないのではないかという懸念も呈されました 。奥構成員も、報道には多大なコストがかかるにもかかわらず、ニュース単体では広告費を稼ぎにくいというジレンマに言及しています 。これは、民放がドラマやエンターテインメントの広告収入で報道予算を賄っている現状を考えると、深刻な問題です 。 こうした課題に対し、日本テレビが開始した「アドリーチマックス」のような新しい取り組みも紹介されました 。これは、放送波を使いながらも素材の中3日での変更や、TVerとの統合在庫でのターゲティングを可能にし、GRPではなくインプレッションを指標とするなど、デジタ...